はじめに(作者からのメッセージ)

文聞亭笑一

NHKが来年は司馬遼太郎の名作「竜馬がゆく」に取り組みます。この原作は1968年にNHK大河ドラマとして北大路欣也を主役として放映されたことがあります。40年以上前の事ですね。まだ、白黒テレビの時代です。「竜馬がゆく」はその時に題名として使用してしまったからでしょうか、今回は「龍馬伝」と銘打ちます。

文聞亭は何度目の読み返しになるのか? 数えていませんからわかりませんが、ちょうど2年前に読み返しました。この時は「篤姫」が主題でしたから、薩摩だけの視点ではなく、 維新前後の全体の流れを捉えるために副本として竜馬や新撰組を追いかけました。時間軸の流れを追うには司馬遼太郎の歴史小説は便利ですからね。

原作の題名をそのまま使うのも気がひけますし、NHKの真似をするのもケタクソ悪いので、『龍が翔る(かける)』としてみました。

全くの私事で恐縮ですが、「龍」も「翔」も孫の名前です。兄が翔希、弟が龍希です。

娘の連れ合いが土佐の高知の出身で、やはり地元の英雄・坂本竜馬に思い入れがあったのでしょうか…。ですから私もこの二文字を使った題名にしてみたかったのです。孫は二人とも片や中学野球、もう一方は小学生野球でグローブとバットを抱えてグランドを駆けまわっています。天空を翔るほどに育つか否かは本人次第ですが、爺さんは期待だけ掛け続けてやろうと思っています。竜馬ほど派手にやってくれなくても結構ですが、世界を視野に入れた仕事をしてほしいものです。

そんな関係もあって、高知には親近感があります。信州の山育ちの私から見れば、土佐はまさに海賊の国で、竜馬の銅像が立つ桂浜から眺める太平洋の広さは「やっぱり地球は丸いなぁ」と感激してしまいますね。

海賊と書きましたが、記紀の昔から、土佐の国は海賊の国として恐れられていた土地柄です。民俗学的にも、東北の蝦夷と並んで、最も古い日本人だと言われた隼人族が中心だったと思われます。黒潮に乗って、島伝いに移民してきた南方系民族の末裔でしょうか。

平安期の土佐日記などには、はっきりと異民族扱いしていた痕跡が見えますからね。鬼の住む国のような表現も随所にあります。海洋民族ですから海、船には遺伝的に近しいものがあって、それが竜馬の夢を育てた根っこだと思いますね。

来年一年は、竜馬と付き合います。よろしくお付き合いください。

現代日本は出口の見えない不況のさなかにありますが、こういう閉塞感にあふれていたのも幕末の状況に似通っているかもしれません。

文末になりましたが、高知在住の土佐異骨相先生にお世話になる機会が増えると思います。

執筆、調査、撮影など、よろしくお願いします。